2019年4月28日日曜日

交差点物語 ちょっといい物語シリーズ

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今日人通りの多い交差点で信号待ちをしていた。
その時、交差点の向こう側に気になるおっさんを見かけた。
おっさんは大きなリュックを背負った上に、両手に何が入っているのか分からないが大量の荷物が入った紙袋を持っていてとても苦しそうだった。
どうして僕がこのおっさんが気になったかというと、僕は医大生で医学には詳しくてこんな明らかに無理な荷物を両手で運んでいると腕の関節が脱臼してしまうんじゃないかと心配になったからだ。
しばらくすると、信号が青になって信号待ちをしていた人達が一斉に交差点を渡りだした。
おっさんも両手に紙袋を持った無理な姿勢で、交差点を渡りはじめた。
その時悲劇は起こった。
突然おっさんの呻き声が辺りに響き渡る。
「うぉーうぉー」とおっさんは言葉にならない奇声を発していた。
心配していた事が現実になった瞬間だった。
おっさんの右腕が脱臼して、右手に持っていた紙袋が地面に落ちていた。
しばらくすると、奇声を聞いた人達が驚いておっさんの周りに集まってきた。
その時おっさんは何を思ったのか「盗るなー、向こうへ行けー、ウガー」と言葉にならない呻き声をあげながらもう片方の手で紙袋を2つ持とうとした。
僕はその時驚愕した。
1つの荷物でさえ脱臼してしまうような紙袋を、片手だけで2つも持つなんてあまりに無謀すぎると。
僕はそんな無謀な行為をやめさせる為におっさんに近づいていった。
しかしその時、さらなる悲劇がおこった。
最悪の事態が発生したのだ。
2つの紙袋を片手で持とうとしたおっさんの左腕が脱臼してしまったのだ。
おっさんは、苦悶の表情で「ウガー、ウガー、盗るなー」と言葉にならない意味不明な呻き声をあげていた。
そしておっさんは、紙袋を持ったまま地面に倒れやがて動かなくなった。
心配した人達がおっさんの周りに集まってきた。
その時一人の若者が何か呟いた。
「あれっここに落ちているの・・・の新刊同人誌じゃね?」
若者はその同人誌を拾うと、どこかに去っていった。
すると様子を見ていた他の人達も、何を勘違いしたのか次々におっさんの持っていた紙袋から本を取り出して持っていった。
あげくの果てには、おっさんの着ていた衣服まで剥いでもっていく者さえいた。
そして最後には、身包みをすべてはがされたおっさんが一人交差点の真ん中で転がっていた。
しばらくすると、通報を受けた警察官が大勢でやって来て、猥褻物陳列罪の現行犯でおっさんをひきずっていった。

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交差点物語

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